G20財務相・中央銀行総裁そろい踏みで中国に「気配り」するのはなぜか?



 ワシントンで4月に行われた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は中国への「気配り」が目立った。世界の主要国が、先行き不安がくすぶり続ける中国経済の回復を息を詰めて見守っているかのようだ。

 「次回7月の中国・四川省での会合までに資本フローに関する政策手段について実践的な政策提言をまとめるべきだ」

 14日のG20会合で中国への気配りの旗振り役を務めたのは日本の麻生太郎財務相だった。「資本フローに関する政策手段」とは、金融取引の規制を強化することで通貨価値の急落を防ぐ政策のこと。国際経済の枠組みでは資本規制は減らす方向に向かうべきだというのが基本認識だが、投資家からの売り圧力で通貨が急落の危機にさらされている場合には資本規制の強化も容認しようというわけだ。

 この提言で最も救われるのが中国だ。中国は昨年8月以降、人民元切り下げや米国の9年半ぶりの利上げを機に資本流出が加速し、人民元暴落の懸念が表面化していた。中国は昨年、人民元取引の自由化を進めると約束して、国際通貨基金(IMF)から人民元の特別引き出し権(SDR)通貨入りを認められたが、日本の提案はその約束の反故を認めてでも人民元暴落を防ごうという意味合いがある。

 つまりそれほどにまで中国経済の先行きへの心配が大きいということだ。IMFによる16年の中国の経済成長見通しは6・5%で、中国が目標とする7・0~6・5%の下限にすぎない。足下では人民元の暴落懸念は和らいでいるが、日銀関係者は「中国を含む新興国経済が要注意状態であることは間違いない」とみる。

 では人民元暴落への不安が再び高まる恐れがあるのだろうか。カギを握るのは米連邦準備制度理事会(FRB)の動向だ。

 FRBは米国経済の堅調な拡大を受けて、昨年12月に9年半ぶりの利上げに踏み切った。しかしその後は中国経済の減速懸念の拡大を踏まえ、利上げのペースダウンを示唆。このことが人民元暴落懸念の後退を手助けした。FRBの利上げ観測と人民元暴落への不安は表裏一体の関係にあるというわけだ。

 しかしバーナンキ前FRB議長が14日のワシントンでのイベントで「FRBは他国のために金融政策を行うわけではない」と指摘したように、米国で景気過熱の兆しが強まれば、FRBは追加利上げに動かざるをえなくなる。財務省関係者は「いつになるかは分からないが、米国の追加利上げはいつかはある。そのときに備えなければならない」と話す。

 中国は世界から不安のまなざしを向けられるなか、経済成長の安定化に向けた構造改革に取り組んでいると躍起になってアピールしている。中国の楼継偉財政相は15日のG20閉幕後の記者会見で、「改革の効果に自信をもっている」と宣言。格付け機関が中国国債の格下げを検討していることについては、「格付け機関の判断は偏向している」と批判した。

 また楼氏は米紙ウォールストリート・ジャーナルのインタビューでは「現在は米国が世界経済の成長により多くの責任を担っていると考える必要がある」と述べた。中国は2008年のリーマン・ショック後に米国経済の低迷が深まるなかで、大規模な財政出動を行って経済成長を維持して世界経済の推進力となったが、今回は米国が同じ役割を担うべきだというわけだ。

 楼氏の胸中を代弁するならば、「米国は今こそ景気過熱のリスクをとって、追加利上げを棚上げするべきだ」といったところだろう。FRBが追加利上げをしなければ、人民元暴落の懸念が再燃することもないし、米国が世界経済を下支えする効果も期待される。その間、中国は構造改革に取り組むことができる。

 ただし中国の構造改革が成功する保障はない。中国はすでに過剰生産の解消や企業が抱える不良債権の処理、国有企業改革などに着手しているが、改革に数年単位の時間がかかることは避けられない。IMFのラガルド専務理事は14日の記者会見で、「中期的に構造改革が実現するかどうかには懸念をもっている」と述べている。また米国が利上げを棚上げし、本当に景気が過熱してした場合には、米国の次の景気後退が長期化するリスクが高まる。

 一方で、米中に次ぐ経済規模を誇る日本はマイナス成長の瀬戸際に立たされており、欧州連合(EU)も中東からの難民流入や英国の離脱の可能性など不安要素が山積している。当面の間は米国の金融政策のかじ取りと中国の構造改革の行方が世界経済の先行きを左右する状況が続きそうだ。(ワシントン 小雲規生)

引用:G20財務相・中央銀行総裁そろい踏みで中国に「気配り」するのはなぜか?


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