空飛ぶタクシーで「交通の未来」体現するドバイ



【ドバイ】アラブ首長国連邦(UAE)最大の都市であるドバイの交通当局は、交通渋滞で立ち往生するビジネスパーソンに全く新しい解決策を提供しようとしている。空中からさっと舞い降りて迅速に目的地へ送り届けてくれる無人タクシーだ。

 ドバイは乗客1人を近くに運ぶための自律型ドローン(小型無人機)の運行を認可する意向だ。中国のドローンメーカー、広州億航智能技術(Ehang)が製造したバッテリー駆動の空飛ぶタクシーは、テスト結果にもよるが、早ければ年内にアプリを通じて予約可能になると交通当局は話す。

 ドローンタクシーは乗客1人とスーツケース1個分のスペースしかない。時速100キロ近いスピードで飛行し、地上の管制センターともつながっている。緊急の際は 最も近い安全な場所に即着陸する。ドバイ当局によると、すでにドローン試作機をテスト済みで、4G移動通信ネットワークを使って制御される予定だという。

 「最終的にはドローンが人類の輸送手段になるだろう」とUAEの未来政策を担当するムハンマド・アフドラ・ガルガーウィ内閣担当相は話す。「空想科学小説(SF)が現実になるのだ」

「世界最大の実験室」

 ドローンタクシーは、旅客用ドローンや音速に近いスピードで移動する次世代交通システムなど新しい輸送技術の最先端を目指そうとするドバイの野心的計画の一環だ。その目的は、利便性を高めると同時に、世界貿易や観光の拠点として近年高まりつつある評判をさらに押し上げることだ。石油収入の減少に直面するペルシャ湾岸諸国は経済の多角化を模索しており、ドバイは地域の金融・観光・交通の中心地という立場を強化したい考えだ。

 「これから起きる変化にあらがうことはできない」とガルガーウィ氏は話す。「先に動いて未来を創出するか、さもなければ変化を強要されるだけだ」

 ドバイにはすでに世界最高層ビルの「ブルジュ・ハリファ」やヤシの木をかたどった沖合の人工島群があり、最近では主要道路の下を蛇行して流れる運河が作られた。現在は世界最大の空港を建設中で、ブルジュ・ハリファよりさらに高いタワーを建設する計画にも着手した。輸送技術のイノベーター(革新的企業)を引きつける取り組みは、未来を自分の手でつかみ取るドバイの新たな段階を象徴する動きといえる。

 「ドバイは技術革新を消費する側から作り出す側に移行している」とプライスウォーターハウスクーパース(PwC)のパートナーで、自治体向けコンサルティング部門のグローバル責任者、ハゼム・ガラル氏は指摘する。

 ドバイはハイテク企業にとって、安い税金や東西の間に位置する理想的な立地に加え、官僚主義にとらわれない親ビジネスの環境であり、試作品に合わせて規制を容易に変更することが可能だ。「われわれは世界最大の実験室になろうと決めた」とガルガーウィ内閣担当相は話す。

自動運転車や超高速輸送システムも

 ドローンタクシーだけでなく、自動運転車の走行試験も予定する。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)率いるテスラが主に技術支援を行っており、同社の電気自動車が今年ドバイで走り始めた。ドバイ首長国のシェイク・ムハンマド・ビン・ラーシド・アル・マクトゥーム首長は2030年までに国内交通の4分の1をスマート化および無人化する目標を設定。実現すれば年間60億ドルの節約効果や経済利益を生む可能性があるとドバイ当局は見込む。

 さらに大がかりな構想が、マスク氏の提唱している超高速輸送システム「ハイパーループ」だ。ドバイは昨年、この技術を開発するハイパーループ・ワンと契約したと発表。空気抵抗を減らすために減圧されたチューブの中を「ポッド」と呼ばれる車両が走るもので、計画によるとドバイとアブダビを平均時速600キロ、約12分で結ぶという。ハイパーループ・ワン幹部によると、交通網が全面開通すれば、ペルシャ湾岸の都市は全て1時間以内で結ばれる。

 「(ドバイ)首長国は夢が大きいだけでなく、それを実現させることで定評がある」と同社のロブ・ロイド最高経営責任者(CEO)は言う。この構想への支援を裏付けるように、ドバイの政府系港湾運営会社DPワールドはハイパーループ・ワンに5000万ドル(約54億円)を出資した。

 ハイパーループ構想が最初の乗客を運ぶのはまだ何年も先の話だ。同社はドバイ道路交通庁と協力し、可能なルートやいかに既存の輸送インフラ(大型空港や8車線の幹線道路、メトロや路面電車など)と融合させるかを検討中だ。コストや資金源についても協議している。

 ロイド氏は、この技術の実現を危ぶむ当初の懸念には取り合わず、ハイパーループはペルシャ湾岸地域の夏季の高温や砂だらけの環境に耐えなくてはならないと述べた。現在、米ネバダ州の砂漠地帯でテストを行っているという。

 ただ、技術革新の拠点としては、シリコンバレーやロンドン、シンガポールにまだ後れを取っているとPwCのガラル氏は指摘する。実際、ドバイが技術革新に熱心なのは必要に迫られた面もある。この数十年でドバイが急激な変貌を遂げたのは、経済や人口がにわかに発展したことが背景にある。それと同時に、交通渋滞や大気汚染も急速に深刻化していた。

By Nicolas Parasie

引用:空飛ぶタクシーで「交通の未来」体現するドバイ


コメントは受け付けていません。

サブコンテンツ

PR

このページの先頭へ

×